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エコカーの最先端の水素自動車。燃費を計算するとそれ程でも・・・?

エコカーの代名詞となっている『水素自動車』。確かに『水素自動車』からの排出は水と酸素だけなのですが・・・・。燃費もイッケン良さそうなのですが、1km移動にかかるガソリン車のガソリンと燃料電池自動車(水素自動車)の水素代燃費は・・・?

『水素自動車』って・・・・?

水素自動車とは、水素をエネルギーとする自動車のことです。
既存のガソリンエンジンやディーゼルエンジンを改良して直接水素燃焼を行う水素自動車と、燃料電池により水素から発電する水素自動車とに大別することができます。

水素自動車は日本国内では1970年代から武蔵工業大学(現在の東京都市大学)で市販のレシプロエンジンの改造で研究が始められ、現在まで数多くの水素燃料エンジン技術の開発の成果をあげてきています。

水素自動車は、1990年代にはマツダとBMWが既存のエンジンを改良する形で水素燃料エンジンの開発を進め、2005年にトヨタ自動車と日野自動車が共同でFCHVバスを開発し、2005年の愛・地球博では会場間のシャトルバスとして8台を運行し100万人が利用しました。
2006年、水素エネルギー開発研究所が水素と水を燃料とするエンジン(HAWエンジン)を開発し、世界35カ国で特許を取得しました。
2009年、広島市にマツダ・RX-8水素エンジン搭載車が納入され、今マツダはフォードと提携しています。

しかし水素自動車には、水素分子が極小のため水素自動車のシリンダーなどを構成する金属を、もろくする特性があります。
そのうえ、水素の燃焼速度が高いため水素自動車のシリンダー内で爆発が起こりやすく、ノッキングやバックファイアーなどが起こりやすい事を回避する必要があります。
そのためには、水素自動車には水素混合率を極めて薄くする必要があり、ガソリンを用いた場合と比較すると、出力は50%程度に留まらざるを得なくその分燃費が悪くなるという不便さがあります。

更に水素自動車には、水素と空気の混合気を燃焼させた場合、二酸化炭素や硫黄酸化物は生成されない代わりに、高温燃焼過程に酸素と窒素が共存する結果、窒素酸化物が生成されるという本質的な問題があります。

このように水素自動車には、これからの発展・開発が待たれる要素がいくつか存在しており、広い意味での水素自動車である燃料電池自動車の開発に力を入れるようになってきているようです。

『燃料電池自動車』って・・・・?

燃料電池自動車(英: Fuel Cell Vehicle、FCV)とは、搭載した燃料電池で発電し電動機の動力で走る車を指します。

燃料電池自動車は、電気化学反応によって燃料の化学エネルギーから発電をする燃料電池で車を走らせる自動車を言います。
燃料には方式によって、水素、炭化水素、アルコールなどを用いる方法が有ります。
水素を燃料として用いる燃料電池自動車(水素自動車)については、走行時にCO2またCO,NOx,SOxなどの大気汚染の原因となる有害物質を排出しないという優位な特性があります。

また、同様に有害物質を排出しない電気自動車と比べても、数分程度の燃料充填で数百kmの走行が可能という点は、充電に時間がかかり走行可能距離も短い電気自動車よりも利便性が高いと言わざるを得ないでしょう。

水素自動車と二酸化炭素(CO2)

ところで、水素は掘ったら出てくるものではなく、石油、天然ガス、石炭等を改質するか、水を電気分解して作るしかないのです。
そこで、石油等の化石燃料から作るには、電力などのエネルギーを使って、水素と結合している炭素を引っ剥がす必要があります。
するとその工程で、炭素は酸素と結びついて二酸化炭素(CO2)になり、やはり二酸化炭素は出てしまうのです。

一方で、水を電気分解するには電気が必要です。その電気を火力で発電すれば、やはり二酸化炭素は出てしまいます。

このように、燃料電池自動車(水素自動車)は走行中には二酸化炭素も排ガスも出さないのですが、燃料の水素の製造段階で二酸化炭素を排出してしまいます。
これは電気自動車も同じですが、電気自動車の走行距離当たりの二酸化炭素排出量は、燃料電池自動車(水素自動車)のおよそ5.5分の1であると言われています。

水素自動車とガソリン自動車のCO2比較

ガソリン自動車はどうでしょうか。
1ℓのガソリンが燃えると、2320gの二酸化炭素が出ます。
例えば、燃費が10km/ℓの車の二酸化炭素排出量は、走行距離10km当たり2320g。
1km当たり232gと言うことになります。

燃費が10km/ℓのガソリン車は、1km当たり232gの二酸化炭素を排出する。

この燃費で1カ月に1000km、年間1万2000km走ると、2784kg(2.784トン)の二酸化炭素を出すことになります。これが平均的な日本人の自動車オーナーが出す二酸化炭素排出量です。

燃費が10km/ℓのガソリン車は、年間2784kgの二酸化炭素を出す。

ちなみに、EUの15年の規制値は、同じ燃費等の条件であれば1.44トンであり、’20年には1.14トンに削減される予定になっています。

水素自動車は燃費が悪いの?燃費が良いの?

さて、水素自動車の燃費は、良いのでしょうか・・・・?
燃料電池自動車(水素自動車)の燃費を、検証してみます。

燃料電池自動車(水素自動車)の平均的な水素消費量、いわゆる燃費は100km/kgだと言われています。
つまり、水素1kgで100kmほど走れるのですが、この水素を水の電気分解で作ると25.5kgの二酸化炭素を排出することとなります(経産省の燃料電池車実証試験データ)。

燃料電池自動車(水素自動車)は、燃費10km/ℓのガソリン車よりも燃費が悪い

1km当たりでは255gとなり、ガソリン自動車の232gと比べると、燃料電池自動車(水素自動車)は、燃費10km/ℓのガソリン車よりも燃費が悪いということになります。

逆算してみると、平均的な燃料電池自動車(水素自動車)の燃費は、リッター9.1km走るガソリン車の燃費と同じなのです。
燃料電池自動車(水素自動車)って、確か“究極のエコカー”ではなかったでしたっけ・・・・?!

燃料電池自動車(水素自動車)の燃費は、リッター9.1kmのガソリン車の燃費と同じ。

燃費から換算する水素代・ガソリン代

ここでは、1km走るのにガソリン車ではガソリン代がいくら掛かるかを燃費から、同様に燃料電池自動車(水素自動車)ではいくら掛かるかを燃費から、それぞれ逆算して比較してみたいと思います。

ガソリン代を140円/ℓとして、ガソリン車の燃費を10~15km/ℓとすると、1km当たりのガソリン代は
  140円÷10~15km/ℓ≒14~9.3円/km
となります。

一方、燃料電池自動車(水素自動車)として今一番有名な“トヨタ ミライ”の公表値を使って、同様な計算を行ってみます。

燃料電池自動車(水素自動車)ミライのタンクには、87.4㎥の水素が充填できるそうです。

水素を購入する場合は、kgで購入することになります。
水素1kgは、11.2㎥ですので、ミライのタンクを満タンにするには
   87.4㎥÷11.2㎥≒7.80kg
が必要となります。

水素自動車の燃費はそれほど・・・・

今のところ日石は、水素を1kg1,080円(消費税込み)で販売していますから、ミライを満タンにするには
  7.80kg×1,080円≒8,424円
が必要となります。

公表されているミライの航続距離は、650km(燃費は650km÷7.80kg≒83.3km/kg)ですので
   8,424円÷650km≒13.0円/km
となります。

前述のガソリンの1km当たりのガソリン代14~9.3円/kmと燃料電池自動車(水素自動車)の13.0円/km、どちらをエコと考えますか・・・・?

●燃費10~15km/ℓのガソリン車;1km当たりのガソリン代は14~9.3円/km
●公表燃費でのミライ      :1km当たりの水素代は13.0円/km

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