2016/05/19
Mive
現在では多くのメーカーで採用されている、トヨタの生産方式。「かんばん方式」などの言葉をお聞きになった方も多いと思います。徹底的に製造行程のムダを省いた、トヨタの生産方式とはどういう者でしょうか?今回は、トヨタの生産方式について徹底追求しました。
第二次世界大戦での徴兵がきっかけ!?
皆さんは、第二次世界大戦については、歴史で学ばれたことと思います。
トヨタ自動車の祖、豊田喜一郎氏は、この第二次大戦で、熟練した作業員が徴兵に取られたことを憂慮し、アメリカ自動車産業で実用化されていた生産ラインを参考に、トヨタの生産方式を提唱したと言われています。
この、豊田喜一郎の提言を、のちにトヨタ自動車副社長になる大野耐一氏たちが体系化したといわれます。これが、トヨタ生産方式の始まりです。
世界のトヨタも戦後は弱小企業だった!?
今では、「世界のトヨタ」といわれ、世界生産台数1位を記録するなど、グローバル企業として活躍しています。
しかし、第二次世界大戦後の自動車産業は、アメリカの独壇場でした。トヨタ自動車といえども、日本のいち弱小企業にすぎませんでした。
そこで、トヨタは、これから世界に対抗するためには、「技術力」+「効率化」が重要であると考え、特に「ムダ」を徹底的に削ぎ落として効率化を上げる方法を考えました。
これらを体系化したものが、「トヨタの生産方式」とよばれるものです。次章からは、「トヨタ生産方式」の詳細についてご説明します。
七つのムダは「かざってとうふ」で示される!?
トヨタ生産方式の柱である、「七つのムダ」とはいったい何でしょうか?
トヨタは、まず、自動車生産現場にある、ムダを「七つ」に集約し、「七つのムダ」を無くす努力を始めます。「七つのムダ」は、車内で「かざってとうふ」とも呼ばれました。
・「か」加工そのもののムダ
・「ざ」在庫のムダ
・「つ」作りすぎのムダ
・「て」手を動かさない、手待ちの時間があるムダ
・「と」動作のムダ
・「う」運搬のムダ
・「ふ」不良品を出すムダ
つまり、トヨタ生産方式では、これら「飾って豆腐」で示される、「七つのムダ」を徹底的に排除することで、「原価」(コスト)が下がると考えます。
JITは、飾った豆腐を実践するための土台!
トヨタ生産方式の第2の柱である、「ジャストインタイム(JIT)」についてご説明します。
JITとは、簡単にいえば、在庫を持たず、必要なものを必要なときに必要なだけ(量)作ることをいいます。このJITを実践することで、在庫のムダや、作りすぎのムダ、不良品を生み出すムダなど、「飾って豆腐」の七つのムダを削減できるわけです。
「かんばん」は、次の工程への「連絡帳!?
トヨタ生産方式の要である、「JIT」は別名「かんばん方式」とも呼ばれます。
実は、自動車製造というのは、エンジン組み立て、ボディーの塗装など、工程がいくつにも分かれています。「かんばん」とは、これらの工程の前の工程から後ろの工程に部品が引き渡されるときの「連絡帳」なんです。
「かんばん」を連絡帳にして各工程の作業が動きます!
図をご覧ください。これが「かんばん方式」の動きです。
【前工程の流れ】
・後ろの工程の人が、置き場に置いた前工程の部品を引取に来る→仕掛かんばんを外す
・外れた仕掛かんばんに記載された数量だけ、前工程で部品を作ります。
・生産が終わった部品にしかかりかんばんを付けて、置き場に置く。→先頭に戻る
これの繰り返しになります。
【後ろ行程の流れ】
・後ろ行程で、前工程の部品を使うときに「引取かんばん」を外す。
・引取かんばんを持って、前工程の部品を引取に行く。
・前工程の置き場で、「仕掛かんばん」を外して、部品に「引取かんばん」をつける。
・「引取かんばん」をつけた部品を後ろ行程へ運ぶ、以下繰り返し。
「かんばん」とは、前工程と後ろ行程の「連絡帳」のやりとり!
つまり、「かんばん方式」と簡単にいうと、次のようになります。
・前工程のひとは、後ろ行程の人が「連絡帳」を外すまで部品をつくりません。
・後ろ行程のひとは、部品がなくなるまで、前工程の部品を取りに行きません。
この流れを徹底することで、在庫や動きのムダなどがなくなっていきます。
にんべんのついた自動化は「自動化」ではない!?
トヨタ生産方式の次の柱、「にんべんのついた自動化」とはどのようなものでしょうか?
ずばり、「にんべんのついた自動化」とは、ムダな生産を続けない、「自動停止装置つき機械」のことをいいます。これにより、不良品の増産を防ぎます。
つまり、完全自動化の機械ですと、異物が混入した状態で稼働を続け、あっという間に不良品の山を築いてしまいます。
これを防止するため、異常が発生した場合に自動停止する機能を付加したものです。
つまり、自動機械に人間の知恵が盛り込まれたものをいいます。
結果、品質の向上につながり、1人で多くの工程を監視できる!
にんべんのついた自動化のおかげで、不良品が減り、品質が向上します。
つまり、機械が危険を察知して、異常があれば自動停止しますので、正常に動いている間は、その機械に携わる必要はないわけです。
結果、1人でいくつもの機械を監視することができ、生産性が向上します。
異常発生時には「あんどん」が点灯!
異常が発生した時には、自動的に機械が停止します。
もちろん、数多くある機械のどれが停止したかが分からないと、対処ができません。そのため、「あんどん方式」と呼ばれる、パトランプが点灯するシステムが採用されています。これで、どこで異常が発生したかがすぐにわかります。
カタログを盲信すると危険!?
ここでいう、「カタログエンジニア」とは何でしょうか?
実は、「カタログエンジニア」とは、「機械をカタログ通りに使うエンジニア」の意味で、機械を工夫せず取扱説明書の通りにしか使わない人のことです。トヨタでは、こういうエンジニアは生産方式には必要ないとの考えです。
つまり、トヨタ生産方式では、導入した機械も、人間の知恵を働かせて、カタログ通りに使う他社との差別化を図っていたわけです。
トヨタ生産方式とは、機械と人間が手を組むこと!
これまで、トヨタ生産方式についてご説明してまいりました。
これまでの流れから、トヨタの生産方式とは、機械と人知が手を組み、七つのムダを削ぎ落とし、効率を良くしていく方法であることがご理解いただけたのではないかと思います。
最後に、トヨタ生産方式について簡単にまとめてみます。
・生産時に発生するムダ(七つのムダ)を洗い出す。
・ジャストインタイム(かんばん方式)の考え方を導入し、在庫や手待ちのムダを減らす。
・機械の自動化に加え、人の知恵を盛り込んだ緊急停止装置でムダな不良品生産を防ぐ。
トヨタ生産方式とは、ムダを極限まで削減する!
ですから、トヨタの生産方式とは、七つのムダを極限まで減らすための努力にほかなりません。
つまるところ、トヨタの生産方式とは、人間と機械が仲良く、効率よく、生産性を向上させるために生み出された知恵なのですね。この結果、今やトヨタは、アメリカの自動車メーカーをも脅かす、世界最大の自動車メーカーになりました。
必要なものと不必要なものを見極める眼を!
私たちも、トヨタの生産方式を参考にして、必要・不必要を見極める眼を持ちたいですね。
いかがでしたでしょうか?
トヨタの生産方式について、ご理解いただけましたでしょうか?
最後までお読みいただきまして、本当にありがとうございました。
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